課題もあることを忘れずに
IT化によって医療の形は大きく変わりました。アナログからデジタルに変わることでより合理的になり情報の共有もしやすくなったわけですが、脆弱性という課題もあります。
情報の脆弱性
デジタルに移行することによって業務効率が上がりましたが、その一方で情報の脆弱性という問題もあります。アメリカの医療サービスの大手、ユニバーサル・ヘルス・サービスでは「ITセキュリティ・インシデント」が起こり、アメリカでのオペレーションに関連したITアプリケーションへのユーザーアクセスを一時停止する事態になりました。2週間ほどで外来施設や急性期ケア病院のITネットワークが復旧して主要システムに接続できるようになり、徐々に通常業務に戻りましたが、このようなセキュリティの問題はIT化するにあたって切り離せない課題でもあります。
患者さんのカルテには個人情報だけではなく、外部には伏せておくべきその他の情報も記載されています。ユニバーサル・ヘルス・サービスの件は一時的にアクセスできなくなったわけですが、もしかすると患者さんの情報が流出していた可能性もあります。そのため、セキュリティ面の強化を最重要課題として多くの企業が研究を続けています。しかし、サイバーセキュリティは流動的なものであり、急速な変化に伴ってその脆弱な部分や度合も変化します。各企業は機敏性を維持しながらもセキュリティサービスの拡充を続けなければならないのです。
確かにIT化によって業務効率が上がりましたが、スピードだけを重視するのではなく患者さんの安全やデータ保護、プライバシーなどあらゆる面も鑑みて取り組まなければなりません。
セキュリティ面とネットワークが大きな課題
特に注意したいのはセキュリティ面です。患者さんの情報漏洩を防ぐのはもちろんですが、最先端医療を安全に提供するためにもセキュリティ面を強化しておかなければなりません。高いセキュリティを実現するには、ネットワークに接続するユーザーや端末に認証システムを設けてアクセス制御を行うといいでしょう。不正アクセスを未然に防ぐアラートや常にセキュリティの安全性をチェックする常駐プログラムがあるとさらに安心です。
また、病院には一刻を争う状態の患者さんもいます。その患者さんに適切な治療をスムーズに行うためにはネットワークの整備も重要です。ネットワークが不安定だとシステムの稼働が安定せず、障害が起きた時に迅速に対応できないからです。安定した、快適な環境にするためには規模が大きいネットワークの導入が可能な専門業者に依頼したり、安定した電波を供給するLCX(Leaky Coaxial Cable)ケーブルを使用したり、無線アクセスポイントで複数の病室をカバーしたりするといいでしょう。
もっと詳しく知りたい人へ
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進んでいるのは規模が大きい病院
IT化が進んでいるのは経営が安定している規模の大きい病院です。最新の医療機器があり、最先端のシステムも導入しているため多くの患者さんが集まっています。業務量が多いため残業もありますが、働きやすいように環境が整えられています。
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莫大な費用がかかる
電子カルテの普及率は病院の規模によって異なります。電子カルテと一口にいっても部署ごとにシステムが異なり、さらにスムーズに連携できるように統合したシステムも必要です。高度な技術が必要なため、開発や設備費用として数億円かかるといわれています。
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IT化によって業務効率がアップ
高齢者の増加により充実した医療・介護サービスの提供が難しくなっています。その状況を打開するとして大きな期待が寄せられているのがIT化です。さまざまなシステムが開発されていますが、中心となっているのが電子カルテです。